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詰襟

その日、私の心臓は、ドキドキして胸を飛び出してしまいそうだった。
「やっぱりダメかも…」
という私の背中を押して、友人が彼を呼び出してくれた。
怪訝そうに彼が「なに?」と近づいてくる。ああ、神様!
「…ね、詰襟、貸してほしいねんけど。いい?」
「ええよ」
あっさりとOKしてくれた彼に、どんな顔で「ありがとう」と言ったのかも覚えていない。そのまま、逃げるように校舎に飛び込み、運動会真っ最中で誰もいない教室に忍び込んで、彼のネームの入った詰襟を抱き締めた。
中学の頃、運動会の時には好きな子の詰襟を羽織る、というのが流行っていた。まさか自分がそれをやろうとは…一方通行の片想いだというのに。
グラウンドに出ると、他の友人が目を丸くして、
「Yちゃん!それ、誰の?」
と聞いてきたり、他の男子が
「ヒューヒュー」
とはやし立てたり。
胸のネームを隠して、曖昧に笑いながらもちょっとだけ誇らしかった、単純な私。後にも先にも詰襟を着たのはあのときだけだ。
私の恋は実らなかったけれど、詰襟のヒンヤリとした感触がなぜか懐かしい。


バレンタインが近いということで…(ウソ)
本当は、某所にある小文たちを、少しずつこちらに引越しております。
この前数点もその関連でございます。
時がたち、カテゴリ倉庫に格納されるまで、お見苦しい点、ご容赦くださいませ。
ちなみに、小学生わがムスコは現在標準服で詰襟を着ております。
160センチなんで再び着れるかも!なのですが、
なんと襟がついていて、かっこよくありませぬ。しくしく。

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