- 2006-05-18 (木) 14:57
- 倉庫・えせえっせ
心を許して話せる友人がいること。
自分をさりげなく見守ってくれる友人がいること。
そして、時には叱咤してくれる友人がいること。
それだけで、どんな困難も乗り越えていける、そんな気がする。
それは、まだ私が高校生ぐらいだったときのこと。
我が家は私を含めて、弟妹もみなピアノを習っており、その日は
年に一度の発表会を、ちょうど一週間前に控えていた。
3人兄弟の中で、一番ピアノが上手なのは弟。
すでに私を追い越して、得意のテクニックを活かした
シューベルトの即興曲を練習していた。
事件は、突然に起きた。
弟が、指先を切るというケガをしてしまったのである。
ケガは深く、一週間で完治するのはとても無理な状態で、
彼は発表会をあきらめざるを得なかった。
もう小さい子どもではないとはいえ、酷だなあと思ったのを
覚えている。
ひと月ほどが過ぎただろうか? いや、半月ほどだったか?
親友のSが我が家に遊びにやってきた。
発表会の顛末は、彼女もよく知っていて、そのとき急に
弟を呼んできてほしい、という。
「ピアノ、聴かせてほしいわ?」
誰にも発表する機会のなかった即興曲…アンプロンプチュを、
弟は彼女に聴かせるために、一所懸命演奏した。
それから年月が流れ……
その日のことを、急に弟が言い出した。
「あのときは、本当にうれしかったんだ」
彼女のさりげない優しさが、心にしみわたったのだという。
それを聞いて、私も嬉しくなったのを、まるで昨日のことの
ように思い出す。
弟は、再びピアノを奏でることはないけれど、きっと
心の中にいつまでもその温かさが残っているはず。
シューベルトの即興曲を聴くたびに、そのワンシーンが
鮮やかによみがえり、
「ああ、あの人と友人になれてよかった」
と思うのだ。
彼女は、このことを今も覚えているだろうか?
私は忘れていないよ。
自分の結婚式ですら泣かなかった彼女が、私の結婚式で
号泣したこととか、ね。
今は遠くて会うこともかなわないけれど、いつかまたきっと、
いろいろと語り合おう、とお互いに言いつつ、けっこう
月日がたってしまっているのではあるが。
参加している某メルマガに載せたもの。
埋もれていた記憶をたぐり寄せてみた。
久しぶりに会いたいなあ。






